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実験と大げさに言っても、やることは簡単だった。
博士の努力の結晶とも言えるたった一錠の薬を、被験者である青年に飲ませればいい。
ただそれだけで、青年はたちまち罪悪感に目覚め、善人として生まれ変わることになるのだ。
薬を投与した後、一週間ほど経過観察がなされた。
もたらされた結果に、助手の男は驚きの声を上げる。
「素晴らしい効果です。毎日のように自身の罪を悔い、神に祈りを捧げています。生活態度も大きく変わり、礼儀正しく、善行に励んでいますよ。まるで聖人のようです」
それを聞いた博士も大満足だった。
「そうであろうとも。いずれはこうやって凶悪犯がいなくなる。再犯率ゼロの社会も夢ではない。やはり私の研究は間違っていなかったのだ」
そんな博士の喜びの声と共に、第一回目の実験はひとまず幕を下ろした。
薬の効果は証明され、被験者には理想的な変化が見られたのだ。
倫理的な問題はさておき、博士の長年の苦労が実を結んだ瞬間だった。
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