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――だがそれも、もう過去の話だ。
僕たちがそれぞれの個室で初めての無重力の世界に心を躍らせているまさにその頃、スペースシップを操縦することのできる唯一のプロであるパイロット、アラン・クライトンが、謎の死を遂げたのだった。
僕たちを「快適な宇宙の旅」へと連れて行ってくれるはずのこのスペースシップには、慣例とは異なりパイロットが1人しか搭乗しておらず、サブパイロットの役割はコンピュータが担う。
以前はNASAのパイロット候補にもなったことがあるという触れ込みの50代のメインパイロット、アランは、パイロットシートに体を沈めたまま目を見開いていて、紅潮した顔には血管が浮かんでいた。
第一発見者である初老の男性はジェラルド・バルサー。グレーの髪を短く刈り込んだ、年齢の割には体格のいい男だった。
彼がトイレの使用方法を確認しようと操縦室へと向かうと、眠っているアランを見つけたという。
職務怠慢を問いただそうとジェラルドがアランの肩に手を掛けると、ベルトでシートに固定されていたアランの頭がぐらりと揺れ、その無重力により膨れ上がった顔でジェラルドを睨めつけたのだった。
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