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ジェラルドは慌てて彼をシートから引きはがし、蘇生処置を試みた。
しかし、その騒ぎに僕たちが気づき、パイロットルームに集まったころには、ジェラルドの救命処置は無駄に終わっていた。
唯一の女性搭乗客が半狂乱になって悲鳴を上げ、肌の黒い若い男がその肩を抱く。
緊急用の通信装置に気付いた僕は、宇宙ホテルに併設された宇宙港の管制と連絡を取った。
管制が遠隔でチェックを行ったところ、幸いスペースシップは自動運転に移行しており、月スウィングバイでの減速とL1ハロー軌道への投入までは、パイロットが居なくても行われると言う落ち着いた説明に、僕たちはほっと胸をなでおろす。
その後はハロー軌道上で宇宙港から別のパイロットがこの船へと乗り込み、宇宙港へは「何の問題もなく」安全に着陸できると言う。
死亡したアランは重力・気圧変化による脳血管性障害の可能性が高いとの所見だったが、詳しいことは宇宙港へ到着してから調べると言う事になった。
とにかく、このまま宇宙を彷徨うことになったり、スペースシップが爆発したりと言うようなことは無いようだ。僕たち乗客5人はお互いの安堵の表情を確認し、早くも紫色の死斑が広がり始めているアランの遺体を協力して遺体収納用のボディバッグへと詰め込むと、誰からともなくそれぞれの個室へと戻ることになった。
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