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episode215 肉体の呪縛
しばらくの間。
征司は何にもしないまま
九条さんの側に立ち尽くしていた。
僕には分かっていた。
なんとかすれば
彼がまだ助かる事。
「お兄様っ……お願い……九条さんを助けて……!」
だから恥も外聞もなく
征司の足元に這いつくばって頼んだ。
「何でも言うこと聞くからっ……!もうバカなことは二度としないから……!」
しかし僕が下手に出れば出るほど
征司の怒りは増すようだった。
「お兄様っ……」
石のように頑なに動かない。
やがて。
「このまま永遠に――葬り去る事だってできる」
恐ろしくも
悪魔のような黒尽くめのなりで
征司はぼそっと呟いた。
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