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「妾のことは、どう説明すれば納得してもらえるか……。ここは、貴君の家があった場所だ。この通り、今は影も形もないが」
告げられた言葉の意味が分からず、しばらく呆けたように彼女を見つめる。やがて、回転の遅い脳がその意味を理解し、僕は飛び上がる程仰天した。
「え、えぇっ!? 家は何処に行ったんですか!? それに、みんなは!? どうしてこんなことに……」
文字通り頭を抱えると、女性は落ち着いた声色で言った。
「落ち着け、主殿。壊れてしまったなら、もう一度作り直せばいい話ではないか」
「作り、直す?」
ありえないことをさらりと言ってのけた彼女は、大きく頷いた。
「そう、作り直すのだ。貴君がその気なら、妾が手伝ってやろう」
角の生えた女性は、妖艶とも凄絶ともいえる笑みを浮かべた。
「そんなこと、出来るんですか?」
半信半疑で尋ねる。馬鹿げた話だが、もし出来るのなら、と考えてしまったのだ。
「嗚呼、勿論だ。貴君がのぞみさえすれば何だって出来る。――叶えたいのなら、この手を取れ」
自信満々で言う彼女の言葉は、僕から思考能力を根こそぎ奪い取った。僕はろくに考えもせず、彼女の細く冷たい手を取った。取ってしまった。――これから起こる、最悪なゲームに巻き込まれるとも知らずに。
「貴君に問う。願いは何だ?」
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