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 十二月十四日。月曜日。忠臣蔵の討ち入りの日。  昨日は厄日だった。加奈子の彼氏による壮絶なライブを無理やり聴いて、頭が変になりそうだった。  小さなライブハウスで爆音に耳を傾けるという行為は、一種の修行だと思う。この修行を乗り越えることができたならば、その人物は人口密度の高い閉鎖空間の苦に耐えてなお、騒音に耐えることのできる優秀な人材である。おそらくNASAの宇宙飛行士採用試験をたやすく突破できることだろう。  私はそれらに耐えることができなかったので、朝から頭痛に悩まされていた。まるで宇宙と交信している気分だ。唯一の救いは、この日返ってきた期末テストの結果が良かったこと。ただし、推薦枠が得られるかどうかは数学の成績にかかっていて、そこは微妙なところだった。  チャイムが鳴る。六時間目の英語の授業が終り、十分間の休憩時間を挟んでホームルームを迎える。担任が三者面談の日程のしるされたプリントを配るほかに伝達事項はなく、続いて掃除の時間となった。私は図書室の掃除当番だった。それも何事もなく終える。図書室から教室内に戻り、帰宅しようとバッグに教科書をしまっていると、校内放送で呼び出しがあった。  呼び出しは生徒会からである。何事かと思って、思い返してみるも心当たりなどない。私は不安を覚えつつ、生徒会室に向かった。  生徒会室に入ると会長の藤本という男の子が、一枚のプリントを渡した。内容は、来年度写真部に新しく部員が入らなければ廃部になる、ということだった。  写真部の実態は帰宅部である。部員は私を含めて三人しかおらず、ほとんど活動実績がない。にもかかわらず、生徒会に呼ばれたのは、私がその写真部の部長だからだ。
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