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「美月は再発なので…。初発の時はまだ七歳で理解できないと思ったので、病気も落ち着いた十二歳の時に、本人も知りたがってたのもあって、家族と話し合って、こういう病気だったんだよと告げました。五年も経過しましたし、それが再発するとは思ってもいなかったので」 「…途中で治療を止めたという事を、彼女は理解しているのかな?」 「…中断して、仕切り直そうって言ったんです。だけど、あいつはそれが…仕切り直すことなんてないと解ってて…治療を止めると言ったんです」 朔の言葉を聞いて、深く息を吸うと、やるせないように吐きだし、すまなそうに眉を下げた。 「そうか…。ごめんね、朔くん。嫌な事を聞いてしまったね」 「…いえ」 「だけど、これだけは覚えていて欲しいんだ」 そう言ってお父さんは姿勢を正し、私たちを正面に見据える。 「自分でそういう決断した子はね、自分の最期をこんな楽しい事があった、嬉しい事があったって、思い出の中で死を迎えるんじゃないんだ。楽しい事も嬉しい事も、悲しい事も…それら全ての経験を自分で選んで、生きているという事。『死に方』ではなく『生き方』を模索しているという事。そして、美月ちゃんにとって死というものは最期まで生き抜いた結果であり、証しであるという事、朔くんにも、もちろん千佳にも知っていてほしい」
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