プロローグ

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生まれる命があれば、消えゆく命もある。 家族に看取られて今その灯が消えようとしていた。 患者さんはまだ若い五十代の男性。 夕食を摂ったあと体調が悪いとソファーに座っていたのだけど、ぐずぐずと倒れ、意識がないと救急要請されたのがおよそ五時間前の話だ。 救急隊が到着した時には、意識の改善はなく、最悪な事に心肺停止の状態だった。 直ちに心肺蘇生が開始され、救命士により気管内挿管と点滴が施された状態でこの病院に搬送されてきた。 薬剤を使用することで心停止だった心臓が動き始め、原因の精査に脳から腹部までのCT撮影を行った。 原因は一番初めに撮った脳の画像ですぐにわかった。 脳幹出血。 循環器内科医の私がわかるくらい、はっきりとした出血画像は、脳幹という部位からも手の施しようがなく、待機の脳外科の先生に連絡を取ったが看取りの方向となった。 そして今――。 十分前に入院した先のICUの看護師から、心拍が二十台に落ちたと報告があり、ICUにやってきた。 ICU内は徐脈によるアラームがひっきりなしにセンターに鳴り響いていた。 そのたびに、他にもいる患者に考慮してアラーム音を看護師が消す。 すると、ピッ………ピッ………と間を置いた心拍の音が小さく聞こえ、それと反するように自分の鼓動は逸っていく。
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