プロローグ

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心の中で力添えできなかった事を謝罪しながら、お疲れさまでしたと呟くようになったのは、いつからだろうか…。 「お口に入った管とか、点滴とかを抜いて、お身体綺麗にさせていただきますね。少し待合室の方で…」 そんな風に説明する看護師の言葉を背で受けながら、死亡診断書を記入するためパソコンに向かった。 心電図のモニターが外され、画面から名前も消されるとICUには自分が発するキーボードを叩く音だけが、やけに大きく聞こえた。 プリントアウトし、近くにいた看護師に手渡す。 「お見送りの時呼んでください」 そう言い残し、私は家族がいる待合室とは反対方向に歩き、階段を使って外へと出た。 昼間はだいぶ温かくなってきた三月も、夜になるとまだ冷える。 「今日は月もない新月か…」 一人語ちりながら空を見上げる。 空には僅かばかりの星があるだけで、風もない暗闇は穏やかに感じた。 朝から働き通しで、普段なら今頃は疲労困憊でダウン寸前なのに、今夜は不思議と眠さも疲れも感じていなかった――。
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