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「勝手だと思います。ですが、一刻も早い治療を勧められる中、兄にはその判断しかできなかった。その後は、毎年、有紗さんの誕生日にプレゼントを贈るようになりました。それが唯一の楽しみだったようです」
「それで、病気の方は……?」
「はい、一度は仕事にも復帰することができるほどに回復したんですが、経過観察の状態が続き、今回再発してしまったんです……次、再発したら、治る可能性が極めて低い、と言われています」
「つまり、今は……」
「かなり厳しいと」
「そんな」
次々と飛び交う言葉に、私の処理能力はなかなか追いついてくれない。名前ですら、今初めて知ったのだ。
「要するに、その人、死んじゃうかもしれないってこと?」
「有紗!」
「残念ながら、その可能性が高まってしまいました。それで、勝手を承知でこうしてお願いに参りました。どうか、兄に会ってやってくださいませんか? 一目で結構です。兄はこのままひっそりと逝くつもりをしているようですが……」
それから、父の弟さんは何度もお願いします、と告げながら帰っていった。
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