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「有紗、ほら、お願い事をしながら消して」
「うん!」
我が家では誕生日の時、ロウソクの火を消しながらお願い事を浮かべる。これは小さい頃に母が始めた決め事だ。私の毎年の願いは決まっている。
この1年も母が元気でいられますように。
ありきたりだけど、私にとってはすごく大事なこと。母に何かあったらと思うと、恐ろしくて身体が震える。
あ、今年は知樹の健康もお願いしなくちゃね。
ふぅっと勢いよくロウソクに息を吹きかえれば、2本は簡単に消えてくれた。
「これで有紗も大人の仲間入りね」
「なんかやっとって感じ」
母に守られるだけの子供から、これからは母を守る存在へ。20歳になったくらいではまだまだだけど、その大事な1歩となるんだと思う。
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