本編

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母はそんな私にただ謝るだけだった。『ごめんね、ごめんね』と。理由も言わず、ただひたすらに。 そんな母を見て幼いながらに後悔し『我が儘を言ってごめんなさい』と繰り返し謝った記憶がある。3歳の記憶はそれだけなのだから、自分の中でも余程印象に残っているのだろう。 結局、父がいない理由は今でも分からない。 生きているのか、死んでいるのかすら。 でも、もう知りたいとも思わない。 今が幸せだから。 会社員をしている母も活き活きと仕事をしているし、私も大学生になって楽しく毎日を送っている。友達だって有難いことにたくさんいるし、大学で知り合った人とお付き合いもしている。 母が定職に就いていたおかげで、特別裕福だったわけではないが貧しかったわけでもなく、然程苦労した記憶はない。 だから、このままで何の不安も不満もない。 ──────筈だった。
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