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「お母さん! お弁当忘れてる!」
「やだ、本当だ。じゃあ、行ってくるわ。有紗も気をつけてね! 今夜は誕生日ケーキ買って帰ってくるから、知樹(ともき)くんも呼んであげなさい」
「はーい! 楽しみにしてるよ」
「いってきます!」
元気よく飛び出して行く母を見送り、私も大学へ行く準備をする。仕事が忙しい母に代わって、料理は私が作っている。朝食を作るついでに、前日の夕飯の残り物も使ってお弁当を作るのも私の役割だ。
自分の誕生日だってそれは変わらない。
「さて、私も行きますか」
戸締まりを確認し、私も忘れ物がないよう改めて鞄の中も確認してから、お気に入りの赤いダッフルコートを着た。外に出てみれば、空を分厚いグレーの雲が覆っているのが見える。
今日は私の誕生日であるとともにクリスマスイブでもある。
天気予報では夕方から雪だと言っていた。この地方では雪は珍しくないが、かといってクリスマスに毎年雪が降るわけでもない。今年は久しぶりにホワイトクリスマスになるかもしれないなと、気分が高揚するのを感じながら大学へと向かった。
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