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塾、塾、急がなきゃ。みんなに相手にされなくなったけど塾を休むわけにはいかない。
あっ前にバカダイがいる。
バカダイとは近所に住む隣のクラスの大翔のことだ。私がボソッとこのクソバカダイとつぶやいたのが咲良にウケてそれから二人でそう呼んでいる。ガサツで頭も顔も悪い。中学に入ってからは挨拶すらしなくなった。
「ハルオだったら読み方間違えられないからいいじゃん」
バカダイのバカ声が響く。ダイショウって呼ばれることもあるぜと言ったが多分ウソだ。
でもハルオって?
隣の男子の名前のことかな?バカダイの横には同い年くらいのバカダイと同じ普通の黒の学生服を着た男子がいた。
「読めるか読めないかって問題じゃねえよ。ネットでよ、当て字で名前をつけるのは親のエゴだって言ってるやつがいたけどよ。ありゃ的外してるぜ。赤ん坊の意見なんて聞けないんだからさ。どんな名前だって親のエゴだよ。それよりもハルオって呼ばれる身にもなれってんだよ。俺から言わせりゃパッと見、読めなくたって、カッコいい方がいいよ」
やっぱりハルオはあの子の名前だ。
「いいじゃん。春の男のハルオ君で」
「うるせえ、ダイト」
そうだ。うるさいバカダイ。ってどうして私、春男って子の肩を持ってるんだろう。春男と春子で同じ境遇だからかな。
「おいっ何ジロジロ見てんだよ」
しまった。バカダイに見つかった。
「ご…」
違う。ごめんって言わない。でも、他に言葉が出てこない。
バカダイなんて無視しよう。
私は早足で二人を通り過ぎた。
春男って男子の「今の誰」と言う声と「近所の春子だ」と言うバカダイの声が聞こえた。
私の耳は真っ赤になっていた。
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