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昨日の塾は勉強にならなかった。
春男君かあ、勝手に君づけで呼んで耳が赤くなる。すれ違いざまに見た春男君の顔がまぶたに焼きついている。
「春子…」
ちょっと鋭い目をしていた。不良っぽかったけど、どうなんだろう。見たことないけど、転校生かな。
「春子ってば…」
あの目と髪型、どこかで見たことがあるような…
「ちょっと春…」
「あーっ!」
立ち上がった私の前に尻もちをついた咲良がいた。
「いててて、何よ春子。急に大声出すんだから」
「…」
「何よ、まだ何も話さないつもり?」
ううんと首を振った。でも言葉が出てこない。
正直、このことは忘れていた。咲良に言われて思い出したけれど、やっぱり言葉が出てこない。
どうしてだろう。自分でも気づかない何かが私の心に幕をはっているのだろうか。
「とにかく、葵と結菜んとこに行こう。取り持ってあげるからさ」
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