8.三日目①

5/10

291人が本棚に入れています
本棚に追加
/352ページ
 バンっと乱暴に部屋のドアが開かれ、スマートフォンを耳に当てた紗名が飛び込んでくる。 「どうしたの? まだ早いよね」  僕が時間になっても外に出ていないときは迎えにくることもあるけれど、こんなに早い時間に来ることは普段はないのに。  一年生のときバラバラに通うようになった僕らは、二年生になってしばらくするとまた一緒に通学するようになった。ある朝、紗名が家の前で待っていたのだ。「彗ちゃん、学校遅れちゃうよ」と言って。 「朝早く目が醒めちゃって、テレビつけたら……」 「テレビ?」 「そう、ニュース。ねえ、彗ちゃん。そんな格好で寝ていたら風邪引いちゃうよ」 「汗掻いたから、今脱いだところだったんだよ」  そう言えば、昨日喧嘩別れみたいになったんだったっけ。あまりにも送られてきたGIF動画が衝撃的過ぎてすっかり忘れていたけれど、紗名もそんなこと忘れているみたいに見える。 「何かあったの? もしかして紗名にも送られてきた?」  その表情に紗名もあのGIF動画を見てしまったのではないかと思ったのだけれど、「送られてきた?」と首を傾げる彼女の様子からするとそうではないようだ。 「ううん、それはまたあとで話すよ。紗名の話は?」 「とにかくニュースを見て欲しいの」 「ニュース? わかったけれど、少しだけ待っていてくれる。凄く汗をかいたからシャワー浴びたいんだ。リビングで待っていて。テレビつけていいから」 「うん、下で待っているね」  そう言って部屋を先に出た紗名を追うようにベッドから下り、イスにかけてあった薄手のパーカーを羽織ってから部屋を出た。  
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!

291人が本棚に入れています
本棚に追加