9.三日目②

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 それはとても簡潔なクラウドだった。  AKって一体なんだろう。もし、これが僕への答えなら、あのリミッターに関する言葉になるのかな。だとすれば、IDか……確かに昨日見た時こんな感じだった気がする。@が抜けているのは赤榕に通知がいかないようにする為なのかもしれない。  そうだ。赤榕の読み方を調べようと思っていたんだった。  インターネットブラウザーで【赤榕】を検索してみる。どうやら、紗名が言ったアカヨウでもセキヨウでもなく【アコウ】と読むようだ。  赤榕は植物名らしい。沢山の樹木の写真が出てきた。 ―――赤榕はクワ科の高さ10~20 メートルにもなる半常緑高木で、枝や幹から気根と飛ばれる空気中に伸びる根を垂らし、岩や他の木に張りついて成長していく。その結果、宿主の木を枯らしてしまうこともあり、絞め殺しの木という別名がついている―――検索結果のブログにはそう書かれていた。 「絞め殺しの木 …… 」  なんだか不気味な名前だなあ。  検索ワードを変え、今度は【締め殺しの木】を検索してみる。  出てきたのは、太い根が絡まり合い宿主の木を絞め殺してしまったものや、宿主の木の代わりに寺院を覆った締め殺しの木の画像だった。すでに宿主の木が枯れてしまったのか内側にはぽっかりと真っ暗な空洞ができているものもある。  中でも特に目を引いたのは、タイのアユタヤにあるワット・マハータートという仏教寺院の廃墟の画像だった。マハータートとは、仏舎利を祀る寺院と言う意味らしい。  14世紀に建てられたというその寺院は、のちにビルマ軍の侵攻により破壊され廃墟になったらしく、その時に落とされた仏像の頭部が締め殺しの木によって締め付けられているというものだ。顔を避けるように巻き付いている様子は、まるで絞め殺しの木には意思があるように思えてしまう。  その画像を見ていると、デジャヴを覚えた。 もちろん僕はタイに行ったことなんてないし、一体何がひっかかっているんだろう。  とりあえず僕はスカリムに戻り、赤榕というリミッターを探してみることにした。
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