9.三日目②

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【 @AK 】  検索画面に打ちこむと確かに同名の赤榕というリミッターが該当した。  そのアカウントページを開いた僕は、思わず声を上げそうになった。  なぜなら赤榕というリミッターが使用していたプロフィール画像は、僕のプロフィール画像と同じ絵が使われていたからだ。僕は絵の一部で、赤榕は全体を写している。  もちろん、同じ画像が使われることがないわけではない。ただ、僕の画像は祐ちゃんが不気味というぐらいのもので、あまり好んで使う人がいるとは思えなかった。それに有名な絵でもないはずなのに。  でも改めて自分の画像を見直してみると、デジャヴの理由がはっきりする。僕がプロフィール画像に使っている絵は絞め殺しの木を描いたものだったんだ。  この絵について深く考えたこともなかったけれど、こうやってみると木自体にも特徴がある。  絵の中央にある巨木に這う血管のような根。その根によって何人もの人間が閉じ込められ、苦しそうな表情を浮かべている。実際の絞め殺しの木が人を締め付けるなんてことはないだろうけれど、デジャヴを感じたのはおそらくワット・マハータートの画像の仏像の顔が、人間の顔と重なって見えたからだ。  自分のプロフィール画像からもう一度赤榕の画像に切り替えた時、違和感があった。何だろう……何かが違う気がする。  赤榕のプロフィール画像を注意深く見てから、もう一度自分の画像を見直してみた。そして、見つけた相違点を何度も画像を交互に見て確認する。  やっぱり……。  一見構図や雰囲気はほぼ同じに見えるけれど別の絵だ。中に描かれている人物が別人だったのだ。皆それぞれ全く異なる特徴を持っていて、とてもリアルに描かれている。一人一人にモデルがいるのではないかと思うくらいに。  もしかすると、僕と赤榕というこのリミッターが使用している絵以外にも、同じシリーズの絵があるのかもしれない。  僕はこの絵について何も知らなかった。母さんの入院していた大学病院で偶然出会った不思議な少女から貰った絵だからだ。
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