10.三日目③

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 言いづらそうに言葉をにごすところをみると、良くはなさそうだ。  小倉さんは優等生という言葉が似合う。真面目で頭が良く、いつも一人で雑誌や本を読んで過ごしている。クラスでも大人しく地味な女の子だ。話してみると面白いんだけれど、きっとみんなはあまり彼女の良さを知らないんだろう。  清瀬さんはクラスでも際立って目立つ、女の子のリーダー的存在だ。あの美貌とスタイルの良さだから、男子からも人気があるし、誰とでも仲が良さそうに見える。  正反対のイメージを持つ二人だから接点がないのも納得できるけれど、そう考えると紗名と清瀬さんが友達なのも不思議な気がした。どちらかというと、紗名は小倉さん寄りだから。でも見た目によらず清瀬さんも内面は大人しいのかもしれないな。 「あ、別に無理に話さなくてもいいよ」 「ううん、私も鹿嶋くんに話しておきたいことがあったんだ。私、清瀬さんと中学が一緒だったんだけど、三年のクラスになってからちょっといじめみたいなことがあって……」  ちょっとという割にその表情はかげって見える。 「いじめ? 小倉さんがいじめられたの?」  小倉さんは目を伏せながら小さく頷く。 「クラスに小学校の頃からずっと仲の良かった子がいてね。その子が急によそよそしい態度になったからどうしたのかなって思っていたら、その子だけじゃなくてクラスの女の子みんなから無視されるようになっていて……」 「急に無視しだすなんて、なんかその子とあったの?」 「理由を訊いたわけじゃないけれど、思い当たることは一つしかなくて。当時一緒にクラス委員をやっていたサッカー部の東野君っていう男の子がいて。その子は私と違ってとても人気のある子だったんだ。でも、結構話していると気が合ってね。向こうはどう思っていたかわからないけれど、私は話すのが楽しみだった。その話を友達にしたあとだったの」 「へえ、小倉さんはそのサッカー男子が好きだったんだ」 「好きってわけじゃないけれど……」  そう言いながらもほんの少し顔を赤らめるところを見ると、きっと好きだったんだろう。 「そのあと東野君とはどうなったの?」
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