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そう言うと、小倉さんは少しだけ僕に顔を近付けて声をひそめた。
「彼女が言うには、『あの頃は美月に逆らうと今度は自分がターゲットになるから、怖くて逆らえなかった』って」
僕は耳を疑った。
「え、美月ってまさか清瀬さんのこと?」
思わず清瀬さんを見てしまう。
「うん。本当のことか分からないし、その子の言うことだから信じているわけではないんだけど。それでもなんとなく前より怖くなっちゃって、やっぱり関わらないようにしようって思っていてね」
清瀬さんがいじめを命令していたなんて。そんなこと考えたくない。紗名が知ったらどんなに傷つくか……。
「その時にもう一つ気になることを聞いて。『高一の時も同じように美月に言われてあるクラスメイトをみんなでいじめていたけど、やっとクラスが離れてもういじめなくていいんだってほっとしている』って」
「それがもしかして、紗名だったんじゃないかってこと?」
「うんでも、私に許してもらおうと思ってついたあの子の嘘かもしれないし、証拠があるわけじゃないけど」
「本当に清瀬さんがやらせていたのかな。だって今、紗名とあんなに仲良くしているのに」
もしそうだったら、今紗名の前で笑っている清瀬さんは何を考えているんだろう。
「一つだけ私も引っかかっていたことがあるんだけど」
ちらっと小倉さんは清瀬さんと紗名のほうに視線を向ける。
「清瀬さんって鹿嶋くんのことをずっと好きでしょ。どうして浅田さんと仲良くなったのかなって、不思議だったんだよね」
「僕のこと? そんなの初めて聞いたんだけれど、本当に?」
「本人に聞いたわけじゃないけど、一年のときから鹿嶋くん狙いだって噂はあったよ。聞いたことなかった?」
つい僕も楽しそうに話をしている紗名と清瀬さんに目がいってしまう。
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