10.三日目③

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*  もし、小倉さんの言うように清瀬さんが紗名や小倉さんをいじめた首謀者だったとしたら?   なぜ今になって仲良くなんてしようとするのだろう。何かたくらみでもあるのかと考えてしまう。  でも、清瀬さんは紗名のことを大事にしてくれているし、紗名も清瀬さんを大切な友達だと思っている。見るからに仲が良さそうだし、清瀬さんがいじめの首謀者だったなんて信じがたい。  小倉さんが嘘をついているとは思わないけれど、小倉さんの元親友が嘘をついているということもありえるし。  できることなら嘘であって欲しかった。紗名が傷つくところは見たくないから。でも……。 「彗ちゃんどうかしたの? なんだか難しそうな顔をして」  僕はいつの間にか小倉さんから聞いた話を考え込んでいたらしい。紗名が下から僕の顔を見上げていた。  校舎の外は昨日よりもさらに肌寒い。風が強いから余計に寒く感じるのかもしれないけれど、紗名も二の腕をすりすりこすっているから寒いんだろう。 「ごめん、ちょっと考えごとしていた。そういえば今日は清瀬さんとどこかへ行く約束をしていたんじゃなかった?」 「そうなんだけど、別の日にしてもらったから大丈夫」 「そっか。ごめんね。朝僕が赤榕のことを調べたいって言ったから」 「ううん、私も気になっているから。それにしても今日寒いね」  そう言って紗名が差し出した手に、僕のそれを重ねる。彼女の手はとても冷たかった。包み込むように握ると、指先を通して冷たさが流れ込んでくる。 「紗名の手、冷たいね」 「彗ちゃんの手はいつも温かいね」  このまま楽しく帰りたいところだけれど、やっぱり早めに訊いておいた方がいい気がする。  でもきっと紗名を怒らせるだろうと思うと、気が重くなってしまう。 「紗名にちょっと訊きたいことがあるんだけど」  そう言ってから、小さく深呼吸をして紗名のほうを向く。
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