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「うん、ごめんね。紗名」
紗名を悲しませるくらいなら、小倉さんには悪いけどもう清瀬さんを疑うのはやめよう。
「ね、電車に乗る前にアイス食べようか」
駅に着いたところで、駅ビルの中にあるアイスクリームショップを思いだし、まだむくれている紗名に声をかける。
「アイスなんかで許してあげないんだから。だいたいこんなに寒いのに彗ちゃんはアイスなんて食べて平気なの?」
「確かにアイスって感じでもないか。じゃあ温かいもの食べに行こう。何が良い?」
「食べたら私の機嫌が直ると思ったんでしょ?」
「まあ……そうだけど」
そう簡単に許してもらえるわけないか。紗名の親友を犯人扱いしたんだから。
「じゃあこのまま帰る?」
「ね、彗ちゃん。彗ちゃんにはわかって欲しいの。美月ちゃんは私の初めてできた親友だから」
親友と口にしたときの紗名のはにかんだような顔を見て、僕は清瀬さんを疑ったのは間違いだと思った。
紗名がこんなに信頼している清瀬さんが、嫌がらせをさせたりするわけがない。
「うん、もう二度と疑ったりしないよ。紗名、本当にごめんね」
紗名の手のひらがもう一度僕の手に触れる。
「あー、なんかお腹すいちゃったなあ。ハンバーガー食べたくなっちゃった、彗ちゃん」
駅ビルの一階に入っているハンバーガーショップをちら見しながら紗名は言う。
「ハンバーガーなら機嫌直してくれるの? 嬉しいけれど、はなさんが夕飯作ってくれているんじゃないの?」
「今連絡しておけばまだ大丈夫だし、ママは彗ちゃんとご飯食べてくるって言ったら何も言わないもん。一緒に調べるって約束したでしょ。また怖いメディアリプが来たら彗ちゃん泣いちゃいそうだし」
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