291人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「彗ちゃんっていつもオレンジジュース飲んでいるね」
「紗名はいつも甘ったるそうなのを飲んでいるよね」
「だって、おいしいんだもん」
この時間のハンバーガーショップは学生服姿の高校生であふれかえっている。そのほうが僕にとっては居心地がいい。昨日のhato+cafeのようなおしゃれな店はなんとなく緊張してしまうから。
「そう言えば、さっき彗ちゃんを待っているときにゆつきさんのニュースを見たんだけど」
「何か進展あった?」
紗名は頷いて、そのニュースを表示したスマートフォンを僕の前に置く。ニュースサイトの記事の上に、テレビニュースで見たものと同じ如月ゆつきの写真が出ていた。
「ゆつきさんの死因はやっぱり窒息死なんだって。ただ、首を吊った跡もないし、自殺の可能性はなくなったみたい」
「やっぱり他殺なのか。でもはっきり他殺とも書かれていないね。凶器が見つからないのかな。たとえ見つからなかったとしても頸椎が砕けるほど絞められたとなると、自殺は無理があるだろうけれど」
「凶器って本当にあるのかな」
紗名の言いたいことは分かる。彼女はまだ如月ゆつきが画像の女の子ではないかと考えているのだ。
「見つかるといいけどね」
凶器はないんじゃないかと僕も思ってしまう。一度似ていると思ったせいで、きっとあれが如月ゆつきなのではという疑念が消えないんだろう。
ハンバーガーを食べ終わりくしゃくしゃに包み紙を丸めて、僕もスマートフォンを開く。
画面にはスカリムのアプリが開きっぱなしになっていた。
最初のコメントを投稿しよう!