2.二日目①

2/19
290人が本棚に入れています
本棚に追加
/352ページ
「彗ちゃん、学校ではスカリム禁止なんだからね!」  かすかに聞こえた耳慣れた声に、画面から目を上げヘッドホンを外すと、想像とは違う顔がそこにあった。  紗名だと思ってにやけていた顔を見られないように慌てて下を向き、コホンとわざとらしい咳でごまかしながら顔を上げる。不自然に引き締めた口元を拳で隠しながら。 「何だ、清瀬さんか。紗名かと思った」  机に乗せていた足を床に戻すと、イスが斜めに傾き、ぎしりと軋む音を立てる。 「やった、紗名に似ていた?」  仁王立ちし頬を膨らませていた清瀬さんは、僕の足が乗っていた机に軽く腰かけ脚をブラブラとさせる。  まくれ上がったスカートから覗く太ももは、相変わらず美しい。しかし、じっと見ていいのかそらすべきか迷って結局体ごと横に向けることにした。  祐ちゃんに言ったら勿体ないと笑われそうだけど、何となく罪悪感を持ってしまうのは、清瀬さんに対してではなく紗名に対してなんだろう。 「うん、似ていた。声そっくりだったんだけど、よく似せられるね」  清瀬さんはふふん、と整った綺麗な顔に自慢気な笑みを浮かべながら部屋の入口をさす。 「ね、紗名来ているよ」
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!