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入口のドアに退屈そうにもたれながらスマートフォンを触っている紗名は、朝とは違う髪型でうっすら化粧までしている。
僕はなんだかもやもやとしたものを胸の内に感じて、それなら太ももに向き合ってやると大胆な視線を清瀬さんの脚に向けた。
しかし、すでにスカートは綺麗に整えられたあとだった。その上、彼女は膝の上に脱いだブレザーをかけようとしている。
「約束の時間は、まだなはずなんだけどな」
若干非難めいた口調になったのは、それが関係しているのかもしれないし、紗名が柄にもなく色気づいているのが面白くないからかもしれない。
「今日は祐さまに会えるんだって紗名朝からご機嫌だったから、待ちきれないんじゃない? ふふ、でもカジくん、あんまり乗り気じゃないんでしょ」
「……何で?」
「何でって、そんなの見ていればわかるよ。カジくんが紗名を気にかけていることなんて誰でも知っているんじゃない? 紗名以外はね」
「清瀬さんってさ、紗名にしか興味がないのかと思っていたら、意外と観察しているんだ」
「だって、それはカジくんがわかりやす過ぎるから」
スカートのひだを触りながらくすりと笑う清瀬さん。
「え、そうかなあ……」
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