2.二日目①

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 そんなにわかりやすいかなあと考えながら、机の中に入っていた教科書類をカバンに詰め込んでいく。全部詰め終えてから顔を上げると、彼女はじっと教室の外にいる紗名を見つめていた。 「清瀬さん、紗名と何かあった?」  考えごとをしていたのか声をかけると、びくっとして僕の方に顔を向ける。 「え、何にもないよ。どうして?」 「なんだか険しい顔に見えたから……ほら、ここ皺寄ってる」  僕が自分の眉間を指さすと清瀬さんは慌ててごしごしと自分のそれをこすった。 「そんな顔していた? やだ、変なところ見られちゃったな。今日体育があったからちょっと疲れているのかも。ほら、マラソン大会の練習だったから」 「そっか。走ったあとってだるいよね。何もなくて良かった。紗名は人見知りするから中学の頃から中々友達できなくて、去年もそれほど仲の良い子がいなかったみたいだからなんか心配でさ。清瀬さんが友達になってくれて本当に良かった」  相手が紗名のことを好きだと思うと、気が緩んでつい饒舌になってしまう。 「いつも心配そうに見ていたよね、カジくん」 「あれ、一年生のときから僕のことを知っていたんだ」 「だってカジくん有名人だもの。その頃はグループが違ってほとんど話したことがなかったんだけど、紗名と話してみたいなって思っていたから、いつも教室に迎えに来るカジくんのことも見てたよ。あ……ほらカジくんそろそろ行かないと紗名が拗ねるよ」  清瀬さんが紗名に向かってヒラヒラと手を振ると、紗名もニコニコしながら振り返す。 「あ、そうだね。ありがとう、じゃまた明日」  僕は急いでカバンを肩にかけ、ドアの前で待つ紗名の元へ急いだ。
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