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「ねえ、聞いてる? 彗ちゃん」
「聞いている聞いている。そんなことはないよ、紗名が行きたいなら別について行くから」
「本当? じゃあ曾根田さんが来るまでお店見ていてもいい?」
返事をする前に満面の笑顔で紗名は駆けだしていってしまった。
「ああ、もう行っちゃった……。そんなに時間ないのに」
追いついたのは下町風情のあるレトロな団子屋で、店の前で焼いていた団子を二本受け取った紗名は、「はい、彗ちゃん」と一本渡して来る。
どうやら店内では焼きそばやおでんなどの軽食も食べることができるらしく、数人のお客さんが座っていた。
「ここのお団子屋さんはね、大正時代からあるんだって。甘くないお醤油味でもちもちなんだよ」
まだ食べていないじゃないかと思いながら、団子を口に入れた。確かにもちっとしていておいしい。
隣で小さな口に団子を頬張る彼女はなんだかリスのようだ。
食べ終わるのを待つ間に街並みを見回してみる。
新しいものと古いものが混ざりあっているだけではなく、異国情緒のある店が点々と並んでいてどこか不思議な雰囲気の街だ。
「紗名、少し待っていて」
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