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道向こうのコンビニでペットボトルの緑茶を買って戻ってくると、すでに紗名はそこにおらず、数メートル先にあるエスニックな雑貨屋の店先にいた。
カラフルな色づかいの目新しいものがたくさん並んでいて、店内からはお香の匂いがしてくる。
「子どもじゃないんだから、勝手に行かないでよ」
紗名の頭の上にペットボトルを乗せると、冷たくてびっくりしたのか真ん丸な目をして振り返った。
「見たかったお店がいっぱいあったから、つい……」
「祐ちゃんとの待ち合わせに遅れるから、また今度ね」
むうっとあひるのように紗名が口を尖らせるから、その唇にボトルを押し付けてやる。
「飲む?」
渋々と言った感じではあったけれど、店から離れた彼女はその緑茶をごくごくと白い喉を鳴らして飲んだ。
「やっぱりお団子にはお茶だね、彗ちゃんありがとう」
「祐ちゃんとの待ち合わせに遅れてもいいの?」
「そうだった、曾根田さんと会うんだった。ついお店にふらふらっと吸い寄せられちゃった」
蜜吸いに来た蝶じゃあるまいし、ふらふらって。
祐ちゃんのことを思いだした途端に紗名は頬を緩ませ、僕の手を引っ張って歩き出す。
「早く行こ、彗ちゃん!」
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