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「もう、勝手だなあ。ね、いつも祐さまって呼んでいるのに、なんで今日は曾根田さんなの?」
背の小さい紗名と、どちらかというと高い方に入る僕が横に並ぶと、互いの顔がよく見えない。だから僕はいつも少し猫背になって紗名を覗きこむように話す。もうそれがすっかり癖になってしまった。
「いきなり名前で呼んだら失礼だし、軽いファンみたいに思われるし。それになんだか恥ずかしいんだもん」
頬がほんのりピンク色に染まっていることに気づいて、前を向いていれば良かったと僕は心の中でちぇっと舌打ちをする。
幼馴染ということもあり、紗名にとって僕は特別な存在ではあると思う。何かあれば必ず僕のところに飛んでくるし、相談だっていつもしてくれる。
高校二年になって清瀬さんと仲良くなってからは、少しだけその役割が薄くなったような気はするけれど。
でも、そのほうがいいんだとは思っている。紗名は元々友達が少ないし、高校に入ってからもぽつんと一人でいることが多かった。それを愚痴ったりすることもなかったけれど、以前は友達の話を聞くこともなくいつも心配だったから。
けれど、今はとても楽しそうだ。きっと清瀬さんが僕の分も話を聞いてくれているんだろう。
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