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「祐ちゃんは優しいよ。確かにあまりストーカーみたいな熱狂的なファンは好きではないと思うけれど、紗名は本当に祐ちゃんの詩が好きなんでしょ」
こくりと紗名が頷く。
「うん、好きだよ。祐さまの詩はとても共感できるし、優しいの」
なぜ紗名が祐ちゃんのファンなのか今まで聞いたことがなかったけれど、その理由はわかるような気がする。多分、彼の書く詩の内容にあるんだろう。
「なんていうのかな、自分は自分で良いんだって思えたり、もっと自分も優しくなろうって思えるの」
「そうなんだ……僕は祐ちゃんの詩には、それほど興味はないんだけれど。祐ちゃんの言葉は好きだな。ちゃんと自分を持っている気がして。一つ一つの言葉に重みを感じる」
「彗ちゃんとは逆で、私は詩以外のクラウドは難しくてよくわかんないけど、祐さまの詩って普段のクラウドと同じ人が書いたとは思えないほど、柔らかな雰囲気だよね」
「そう? そういう面もきっとあるんだよ、祐ちゃんには」
「仲のいい彗ちゃんが言うならそうなんだね。あー早く会ってみたいなあ、祐さまに」
そう言って腕を絡ませた紗名は、「楽しみだね」と嬉しそうに僕の顔を見上げた。
紗名にとっては幼い頃と変わらずに接しているだけで、特別な意味を持たない。それでもやはり僕がドキっとするのは仕方のないことだと思う。
でも嬉しさと共にこうやって向けられる幼馴染としての好意に、最近胸がちくりと痛む。
贅沢なのかもしれないけれど、もうこの幼馴染という関係が潮時だということもわかってはいる。ただ、前に進めないだけだ。
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