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「あ、彗ちゃんあった! 雑誌に出ていた写真と同じお店だ」
紗名が足を止めたのは、柔らかな白が基調のナチュラルな建物の前。周りに植栽されたグリーンが落ち着いた雰囲気をかもし出している。
真っ白な壁には黒い金属で店名のロゴをかたどった『hito+cafe』という文字があった。
「そうみたいだね」
カフェの外から覗いてみても、店内に祐ちゃんがいるかは見えなかった。
「中にもう祐さまいるかもしれないね」
「うん、入ってみようか」
そう言いながら白い扉を開けると、ドアベルの音がカラコロカラと鳴った。
ギャルソンエプロンをつけたショートボブの女性店員が軽やかな声で「いらっしゃいませ」と笑いかけてくれる。
「あの……友達が先に来ているかもしれないんですが」
「男性のお客様ですか?」
店員はそう確認してから店内を見回す。多分制服姿の高校生がいないか探しているのだろう。一応僕も店内を見てみたものの、男性客は一人もいないようだった。
テーブルに案内されると、二人分の水が運ばれてくる。
祐ちゃんが来たらこの席に案内してくれるというので、メニューを見ながら待つことにした。
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