2.二日目①

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 ありたまゆりというのは、奇抜な服装や独特な感覚でデコレーションされた部屋、テンションの高いキャラクターなどで知られる、スカリムでアイドル的人気を誇るカリスマ女子高生のSSランクリミッターだ。  僕も一応フォローをしているけれど、それほど興味のある内容ではなく、いつも目に留まった画像をちらっと見るくらいだ。  人気のあるリミッターほど本名ではないスカリム用の名前を使い、学校名なども伏せている。SSランクリミッターで祐ちゃんのように本名を使っているリミッターはまれだ。きっと、このありたまゆりという名前だって本名ではないだろう。 「そろそろ時間だよね」  まだ気になるのかその店員を目で追いながら紗名が言う。 「うん……過ぎているけれど、もしかしたら学校で何かあったのかもしれないし、注文するのはもう少し待とうか」  そうは言ったもののなんとなく心配になり、僕はスカリムのアプリを開くことにした。  画面がスカイブルーの空模様になると、スカリムのロゴマークが静かに浮き出してくる。それを向かいの席から覗きこんでいた紗名がわずかに眉を潜めたのが、目の端に映った。 「どうしたの?」 「……嫌いなの」   口をとがらせた彼女の細い指が、スマートフォン上で止まる。 「何? スカリムのロゴ?」 「そう、スカリムのロゴマークってなんだか気持ち悪い。何でこんなマークにしたのかな」 「気持ち悪い? 僕は綺麗なロゴだと思うけれど」  スカリムのロゴマークは、薄い水色の背景の中心にハートの形の実があり、そこから左右に葉が広がっている。上品で爽やかなイメージを持っていた僕は気持ち悪いなんて一度も思ったことがなかった。 「それ、心臓を何かが締め付けているみたいに見えるんだもん」 「心臓?」  改めてロゴマークをじっと見る。 「ほら、このハートの形―――これって心臓でしょ?」  確かにそう見えなくはないのかもしれない。 「まあ確かに心臓だと思うと、植物が締め付けているみたいでグロテスクかも。でも、スカリムと心臓って全く関係ないよね? たまたまそう見えるだけだよ」 「えー、そうかなあ」 「うん、そうだって。それはともかく、祐ちゃん遅いね。どうしたんだろう」  二人して窓の外を見てみたけれど、祐ちゃんはやはりいなかった。
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