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「彗ちゃん、祐さまってスターゲートで連絡とれないの?」
スターゲートはスカリムの親企業であるERスターのアプリで、スカリムユーザー同士が無料で会話ができる音声通話サービスだ。ネット回線を利用して繋ぐため、通話料金が発生しない。
スカリム登録申請時に、保護者が利用許可をしていないと使うことはできないけれど、スカリムを利用している高校生のほとんどが、通話はこのアプリを使っていると言われている。
「うん、さっき見てみたんだけどID自体が表示されないから、スターゲートは使えない設定になっているのかも。普通の電話番号もウィスクラができた時に訊いてみようかなと思ったんだけど、もしはぐらかされたりしたら凹みそうでさ」
「会おうって言ってくれたぐらいなんだから、祐さまははぐらかしたりしないと思うけど」
「うん……そう思うんだけどさ。とりあえずウィスクラを送ってみるよ、もしかしたら何かあったのかもしれないし」
もう約束の時間を10分ほど過ぎていた。もし、遅れるにしても几帳面な祐ちゃんなら連絡くらいは寄越しそうなものだけど。さすがにそろそろ注文しないと店に悪い気もするし。
「とりあえず、その前に何か頼もうか」
「うん、そうしよ」
だいたい僕はこういうお洒落なお店に来ると、そわそわとして落ち着かない。女性客が多いのもあるし、制服だというので気が引けるというのもある。
それを察したのか、さっきの店員は店内奥の段差を上がったところにある、ベンチシートタイプのテーブル席に通してくれていた。
オープンキッチンのすぐ横に位置するそのテーブルは、他のテーブルと目線の高さが違うからかプライベート感があるし、会話に気をつかわなくても良さそうだ。
別の男性店員がテーブルに来て、オーダーを取り戻っていった。その後ろ姿を見送ってから、祐ちゃんにウィスクラを送ろうとプロフィールページを開こうとすると、ちょうどその時スカリムの通知が届いた。
「もしかして祐ちゃんかな」
祐ちゃんからだろうと通知を開く。
「あれ……何だろ」
それは祐ちゃんからではなく、知らないリミッターからの画像が添付されたメディアリプだった。あとにしようかなと一瞬迷ったけれど、見忘れるといけないと思いとりあえず画像を開いてみることにする。
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