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「うわっ!」
目にした途端びっくりして思わず大きな声が出た。手を引っ込めた勢いでスマートフォンがテーブルの上に飛んでいってしまい、ぶつかったコップの水を少し零した。
「どうしたの彗ちゃん!」
目を丸くしたまま、裏向きになったスマートフォンをひっくり返そうとした紗名から、僕はむりやりスマートフォンをひったくる。
「わ、びっくりした! 何で隠すの?」
不機嫌そうにむっと口を突き出す紗名が僕の腕をつかみ揺すった。
「ねえ、彗ちゃんってば!」
顔を上げても喉の奥が締めつけられたようになってすぐに声が出てこない。
「ごめん……何か変なものが送られてきたから、紗名は見ない方がいいと思って」
画面が見えないようにぎゅっとスマートフォンを握り締める。
「変なものって、もしかして……」
しかし、何を勘違いしたのか紗名の口はへの字に曲がっていく。
「違う違う、そういうのじゃなくて、ちょっと気持ち悪い画像なんだよ」
慌てて否定しても、彼女はまだ疑いの表情を向けている。
「気持ち悪い画像ってどんな?」
「うん……とにかく見ない方がいいよ。たくさんの人をフォローしているから色んな人がいるけれど、今までこんな嫌がらせみたいなことされることはなかったんだけどな」
紗名は急に真剣な表情になる。
「……気をつけた方がいいよ。彗ちゃんは今フォロワーを増やすのに必死みたいだけど、中には悪い人だっているんだから」
普段人を悪く言うことのない彼女がそういうことを言うのは、何だか不思議な気がした。まるで何かに怒っているようにも思える。
「そうだね、気をつけるよ」
不思議に思いながらもそう言って、スマートフォンをポケットにしまった―――つもりだった。でもその瞬間、手からスマートフォンが奪い取られていた。
「彗ちゃん、油断大敵!」
「ダメだって!!」
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