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勝ち誇ったように画面を見た紗名の笑顔は、潮が引くように消えていく。
「やだ! 何これ、怖い……」
遠ざけるように手を伸ばしながらそれを見る紗名の目に、じわじわと涙が浮かび始める。
「だから言ったのに、見ちゃだめだって」
「冗談だと思ったんだもん。彗ちゃんねえ、これ本物の写真なの?」
再び紗名からスマートフォンを取り上げ、もう一度その画像をじっと見てみた。
どう見ても絵ではない。確かに写真のように見えるけれど、それが写真だと思うことを頭の中が拒否しているようだ。
「どうやったらこんなふうになるんだよ、本物のわけがないじゃんか」
画面の中では見たことのない制服を着た女の子が苦悶の表情を浮かべていた。
ブレザーの上しか写ってはいないけれど、少なくともこの辺りの高校の制服ではなさそうだ。僕はその制服を一度も見たことがなかった。
何か強大な力で締めつけられているかのように奇妙に歪んでいる首。
骨が砕けているのか頭が不可思議な角度に曲がっている。眼球は圧力によって押し出されたのか異常なほど飛び出しているし、舌はだらりと垂れ下がっていて。
もし彼女の顔を知っていたとしても、元の顔と比べるのは困難だろう。右目の下にある大きなほくろが、まるで涙を流しているみたいだ。
不思議なのはそんな状態なのに意識がまだあるように見えることだろう。意識がないのなら垂れさがりそうなのに、彼女の両手は首に巻きついた何かを取ろうしている。
そのせいなのか首から胸にかけて、爪を立てて掻きむしった多数の傷が血を滲ませていた。
「CGだよね、だって……」
紗名の言いたいことはわかる。ただ、口に出すと認めてしまうようで怖いだけだ。
「そうに決まっているよ」
だから僕は特殊メイクや画像処理が施されているんだと思うことにした。
それなのに声が震えてしまう。狂気じみた画像が気持ち悪いということ以上に、この画像からはおぞましい何かを感じる。それが何なのかはわからないけれど、体の奥の方から震えが止まらなかった。
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