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「これ彗ちゃんだけに送られたんじゃないよね、すぐに拡散されて話題になるだろうし、何もしなくていいよね」
紗名は僕の顔とスマートフォンの画像を見比べながら言う。
「警察に届けるとか誰か大人に言うってこと? それはできないよ、父さんにばれたら絶対にもうスカリムができなくなる」
「確かに彗ちゃんのパパは怒りそうだけど。これって誰が写真撮ったのかな。この子多分私たちと同じ高校生だよね。ねえ彗ちゃん、まだ生きているなら……」
彼女の前で誰かが写真を撮っているのを想像してぞっとした。その誰かが彼女をこんなふうにした張本人なんだろうか。どれだけ強い力を込めればこれほどひどい状態になるのか……まるで人間の力じゃないみたいだ。
「仮に実際にどこかで撮られた写真だったとしても、もう生きているわけないよ。だってあんな……」
なんだか後ろめたい気がした。スカリムでの目標を達成する為に、人を見捨てようとしているなんて。
父さんの仕事を継ぐなら、人を救う人間にならなければいけないのに。でもここまで来たのに諦めるなんて自分にはできそうにない。それを察したのか、紗名が抑揚のない声で同意した。
「そうだよね。生きているわけないね」
多分紗名はそんなふうには思っていないけれど、僕に合わせてくれているんだろう。
そのまま黙り込んだ二人の間に重苦しい空気が漂う。僕はそれから逃げるように画面を切り替えた。
「それより、祐ちゃんにリプを送らなきゃ」
そう言うと、紗名もスマートフォンの画面から視線を外し、自分のスマートフォンでスカリムを開いて何かを見始めた。
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