3.二日目②

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 祐ちゃんにウィスクラを送り、スマートフォンを制服のポケットにしまっても、まだ紗名はスカリムを見ている。  ありたまゆり似の店員によって運ばれてきたオレンジュースを一口飲みながら、しばらく紗名を眺めていてもこっちを見てくれない。  真剣な顔つきで何かを読んでいる彼女は集中しているのか、目の前に置かれたチョコレートドリンクにも気づいていないようだ。時折カランと溶け始めた氷がグラスの中で動いて音を立てる。  店内に流れるお洒落な音楽と女性客のお喋りする声に、さっきの出来事が嘘に思えてくる。遠い場所で起きた誰かの不幸がリアルに感じられないみたいに。  ニュースで見るアフリカで飢餓や病気に苦しむ子ども達を救えないからって毎日気に病んだりはしない。それと同じことなんじゃないだろうか。あれは僕にとってのリアルではない――そう思えば幾分楽になるような気がした。  その一方で、紗名があんな目にあったらと考えずにはいられない。  もしあれが紗名だったとして、画像が受け取った誰かが、まだ生きている可能性のある彼女を助けようとしなかったら?  きっと僕は激しい怒りを覚えるだろう。自分は見過ごそうとしているのに。そんな自分の身勝手さにため息が出る。  気持ちを切り替えようと、例のありたまゆり似の店員の姿を探してみた  彼女は忙しそうに店内を駆け回っているにもかかわらず、絶えず笑顔で接客に当たっている。可愛いし感じも良いから、きっと彼女目当てでこの店に来る客も少なくはないんだろう。  顔は似ているけれど、似顔絵で見るありたまゆりは、もっと中性的で不完全なイメージがあった。  そのアンバランスさに魅力を感じているフォロワーもきっと多いんだと思う。でも本人に会ってみたら、実際はこんな感じなのかもしれない。  どちらにしてもこういう猫目の女の子は、僕の好みではないようだ。  もう一度目の前の紗名を見ると、注文したドリンクが来ていたことにようやく気付いたようで、画面を見ながらその甘ったるい香りを放つ飲み物を幸せそうに吸い上げている。僕の好みは当然こっちだ。
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