3.二日目②

5/14

291人が本棚に入れています
本棚に追加
/352ページ
 誰だって何かしら大人に対する不満をくすぶらせている。僕だってそうだ。けれども、そんな高校生達をたきつけあおる新田のクラウドに僕は何か異常性を感じてしまう。  それだけではない。気に入らない人間の個人情報を晒し、その人物について皆が悪意を持つように仕向けるのだ。直接手をくだすわけではないが、信者達は新田が気に入らないと思った人物を徹底的に叩く。  以前はそれが、事件の犯罪者や政治家などに対してだったけれど、最近では同じ高校生に対してもかなり攻撃的な発言をする。  スカリム内にその高校生がいようものなら、信者達が殺到しスカリムから消えるまで嫌がらせを続けるらしい。  新田やその信者達がおかしな方向に進んでいるということはみんなわかっているのに、誰もそれを止めることはできない。新田や信者達が怖いからだ。みんな自分に火の子が降りかかるのを怖れる。僕だってそうだ。  SSランクだというだけでフォローするリミッターもいるし、新田は自分のクラウドを発信するだけではなく、皆が興味を持ちそうなクラウドを見つけてはリクラウドするから、信者のふりをして取り入りリクラウドして貰おうとする情報発信系リミッターまでいるぐらいだ。そういったこともあって同じSSランクのリミッターの中でも、新田のフォロワー数はトップクラスだ。  だから誰が新田のフォロワーだったとしても別段おかしなことではないけれど、争いごとを嫌う紗名が新田に興味を持つなんてなんだか信じられなかったし、そうであって欲しくなかった。 「紗名って新田なんかフォローしているんだ」  とがめるような口調になったのは、そういう思いがつい言葉に表れてしまったからだろう。口に出してからしまったなと紗名の様子を伺った。でも特に気にしているそぶりはない。 「今日ね、美月ちゃんがどうしても見たいクラウドがあるって言っていたんだけど、電池切れしちゃって。だから代わりにそのクラウドを探してあげたの。時間があまりなかったから、結局見つからなかったんだけど。そのクラウドが新田遼のところからなら見つかるらしいって美月ちゃんが言うからフォローしたの。あとでフォローを外そうと思って忘れたままになっていたみたい」  なんだ、と安心したのも束の間、今度は紗名が厄介なことに巻き込まれるのではないかと心配になる。
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!

291人が本棚に入れています
本棚に追加