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紗名はもう一度ストローをくわえて底の方に溜まっていた氷とチョコの混ざった液体を吸い上げ、おいしくなかったのか渋い顔をした。
「その話をね、美月ちゃんとしていたの。私だったら怖くて眠れないって言ったらね、美月ちゃんが新田遼はホラー好きだから怖い画像を見慣れているんじゃないかなって言ってた」
「ああ、そういえばよくホラー映画を見たとか、怖い話とかのクラウドが流れて来るね。じゃあ新田はCGだと思ったのかな」
「彗ちゃんだってそう思ったんでしょ?」
紗名は一瞬、目だけ上げて僕の顏を見た。なんだか「本当にそう思っているの?」と紗名が訊いている気がして、僕は気づかなかったふりをした。あれが偽物だなんて本当は思えないけれど、それを認めたくない。
「そろそろ新田の信者が見つけているんじゃないの?」
「それがね、誰も見ていないのか送った人のリミッター名がまだ出てきていないって美月ちゃんが言ってたよ」
深夜から早朝にかけては休みの日でもない限り、ほとんどタイムラインは動かない。けれど、新田のフォロワー数を考えたら誰も見ない時間なんてあるんだろうか。
「とにかく新田は今犯人捜しに躍起になっていて、『そいつを見つけたら消して欲しいリミッターを俺が消してやる』って言っていたんだって。だから、信者達は狩りでもするみたいにその犯人を探しているらしいの」
「ふーん。教祖は相変わらずだね。それにしても清瀬さんはなんでそんな物騒な話に首を突っ込みたいんだろう。もしかして新田の信者なの?」
オレンジジュースのグラスを持ち上げると、カランと透き通った氷が音を立てる。それはどこか硬い響きがした。
「まさか、美月ちゃんが新田遼のことを良く言っているのなんて聞いたことないよ」
「……誰か消していまいたい奴がいるとか? そんなわけないか。清瀬さん優しいし」
「そうだよ。彗ちゃんってば。美月ちゃんはそんなことしないもん」
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