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店に戻ると、紗名も不機嫌そうに頬を膨らませながら頬杖をついてこっちを見ていた。
「もー彗ちゃんいきなり一人でいなくなるんだから」
「ごめんごめん。外に成北の制服が見えたから、祐ちゃんかと思って追いかけたんだよ」
「え、祐さまだったの?」
頭を振って否定すると、紗名が「なんだあ」とがっかりしたため息を吐く。
「今日はもう来そうにないね。きっと何かあったんだよ。スマートフォンを失くしたとかさ」
「うん……」
残っていたジュースを飲みながら、スカリムを開く。
「そうだ、さっき思ったんだけど、メディアリプを送ってきたリミッターって誰だったの? もし、新田遼に送ったのと同じ人だったら、リプを消されちゃうかも」
「うん、今それを見ようと思ったんだけど」
紗名が画面を覗きこんでくる。
「だけど?」
「もうあのリプはないみたいだ」
「えー!! キャプチャでも撮っておけば良かったのに」
今そんなことを言われても、紗名の話を聞く前にアプリを閉じてしまったんだから仕方がない。
「だって突然消えるなんて誰も思わないし、あんな気味の悪い画像を保存したくないよ」
「あれ彗ちゃん怖いの苦手だっけ。画像を保存するのが嫌だなんて意外」
「前に祐ちゃんが、現代人はスマートフォンに依存しすぎていて危険だっていうクラウドをしていてね。肌身離さず長時間身に着けていると、スマートフォンも体の一部になるんだって。毎日身に着けている指輪や時計、お守りとかと同じような感覚で、ないと不安で仕方がなくなる。そうなったら体の一部みたいなものだって。そういうの紗名だってあるでしょ」
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