3.二日目②

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「スマートフォンがないと不安なのはわかるけど、それと画像を保存するのが良くないのと関係があるの?」 「うん、これはただの祐ちゃんの考えで学説とかじゃないよ。脳っていう記憶する場所があるのに、今は何でも忘れたくないことをスマートフォンに保存してしまう。そうすると脳は、その記憶を保存した場所とファイル名だけを覚えて、記憶の中身を覚えることをスマートフォンにゆだねてしまうようになるんだ。そして必要なときにスマートフォンから記憶を呼び出す。これを繰り返しているうちに、脳はスマートフォンを自分の一部だと認識するようになってしまうんじゃないかって」 「よくわかんない。祐さまのクラウドっていつも難しいんだもん」  紗名のハの字になった眉を見れば、すでにうんざりしていることはわかるけれど、僕は説明を続ける。 「ウイルスとか悪さをするプログラムをパソコンに取り込むのは良くないことだっていうのはわかるよね」 「うん、壊れちゃうからでしょ」 「まあ……そんなところかな。脳だって同じことなんだって。脳だけで記憶するならもっと記憶すべきこと、忘れてもいいことを瞬時に精査するのに、スマートフォンに記憶させるときには、不必要なものや害のあるものでも簡単に取り入れてしまう。 僕もよくやってたんだけど、あとで見ようと思ってスクリーンショットに撮っておいたり、誰かに見せたいネット上の画像を保存したりね。それでフォルダがごちゃごちゃになるんだよ。 脳はパソコンのハードディスクみたいなものだから、その一部であるスマートフォンに悪いものを取り込めば当然ハードディスクである脳も汚染されるって祐ちゃんは言うんだ。 確かに見たいものをスマートフォンから探すとき、毎回そのごちゃごちゃのフォルダの記憶を目にするわけだから」
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