3.二日目②

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「汚染? だって、人間とコンピューターは違うでしょ」 「まあそうなんだけど。でも、悪いものをたくさん目にしたり、読んだりすれば、自分の体や精神にも必ず影響がでるっていうのはわかるような気がするんだよね」 「ふうん、それで彗ちゃんは悪い影響が出そうだから嫌だったんだ。祐さまって案外縁起とか気にするほうなのかな」 「どうかな……でも、誰でも悪いことなんておきないほうがいいって思うよ。紗名だってそうでしょう」  スマートフォンが脳の一部だという祐ちゃんのクラウドを読んだとき、手にしているスマートフォンに違和感を持った。こんなのが脳の一部になっていいはずがないと。  そう思いながらも、手放すことができないほど、すでに依存状態にあることが怖いと思った。  だからこそ、祐ちゃんが言うように必要ないものや、頭の中に入れたくないものはダウンロードするのをやめようと思ったのだ。 「本当はやっぱり怖いだけなんでしょう」  紗名は疑いの目を僕に向ける。 「違うって。とにかくなんか嫌だったんだよ。だいたいさ、もう少し紗名が早く話してくれていたらリミッター名だけでも確認できたのに」 「えー、彗ちゃんもリミッター名見てなかったの? それじゃあ新田遼と同じじゃない。でも、少し前まで見ていたのに、いつ消されちゃったんだろう」  紗名はそう言いながらグラスについた水滴を指先にとると、テーブルの上にハートマークを描きだす。 「見るには見たんだけれど、覚えていないんだよね。漢字だったと思うけれど。アプリを閉じるまではあのリプを開いたままだったから、送ってきたリミッターがいつ消したのかもわからないしね。でもこれが新田と同じリミッターから送られてきたものなら、新田が怖いからという理由で消したわけではなさそうだね」 「どうして?」 「やっぱり開いてすぐにそんなちょうど良く消えるなんていう偶然、何度も起こるはずがないよ。わざと消しているんだ」 「そっかあ。ね、彗ちゃん、リミッター名の頭文字とかも覚えていないの?」 「画像を開く前に見覚えのない名前だなと思ったのは覚えているけど、あんまり注意して見ていなかったんだよ。良く知らないリミッターからクラウドが来るのも、別に珍しいことじゃないし」  ふうん、と納得のいかない返事をして紗名は絵の続きを描きだした。
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