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新田も同じような気味の悪さを感じたのだろうか。
僕はあの画像を見たときに感じた強い悪意のようなものを忘れることができないでいた。
新田の場合は自分以外誰もそのリプを見ていないと言うのだから、僕よりも一層疑心暗鬼に陥っているのかもしれない。
「彗ちゃんにメディアリプを送ったのって、やっぱり新田遼に画像を送ったリミッターと同じ人なのかな」
紗名が濡れた指先をタオルで拭きながら言う。
「可能性はあるけれど真似をしただけかもしれないしわからないね。どちらにしても確かめようがないし、新田と一緒に騒ぎ立てたくはないから諦めるしかないかな。でもさ、新田と僕だけっていうのもなんだか不思議な組み合わせだから、他にも送られてきた人がいるかもしれないし、少し様子を見ていてもいいのかも」
「様子見かあ。ねえ彗ちゃん、リプの画像のことをやっぱり大人に言ったりはしないよね」
「うん」
つい紗名から目を逸らしたのは、罪悪感があるからなんだろう。
「……うんわかった。あ、そうだ、まだ祐さまから連絡ないの?」
場の空気を変えようとしたのか、紗名がわざとらしい明るい声を出す。
「忘れていた」
「もう彗ちゃんったら、何の為にこの店に来たのか忘れたの?」
そう言ってくすりと笑うから、つられて僕も笑顔になる。
テーブルの上に置いてあったスマートフォンには、いつの間にかたくさんのクラウドが届いていた。
授業が終わってから夕食の時間の前までに、毎日多くのクラウドのやりとりをする。この時間に皆が興味を持ちそうな話題のクラウドを送ると、瞬く間にリクラウドされて広がっていくからだ。だから、いつもなら僕の一番忙しい時間でもある。
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