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祐ちゃんとファンについての話をしたことはないけれど、普段の対応を見る限りめんどくさいのだろうとは思う。
「……まあ、あれだけいっぱいいるとさ、全員に返すわけにはいかないし、誰を選んでも角が立つから、わざと距離を取っているんじゃないかな。祐ちゃんが煩わしく思うのも仕方ない気がするけどね。祐ちゃんファンのフォロワーってアイドルの追っかけみたいだって言われているし。高校の前で待ち伏せしていたりね。でも紗名には会ってみたいって言っていたよ。だからそんなことはないと思う」
紗名に言いながら僕は自分にも言い聞かせる。そんなことはないと。だって、祐ちゃんから言ってくれたんだ、会おうって。
「本当? 良かった。でも私は別に祐さまの見た目がかっこいいから好きなわけじゃないんだけどね」
「そうなの? かっこいいって言っていなかったっけ」
「それは言っているだけなの。本当は詩が好きなんだもん」
「言っているだけねえ、ふーん」
本当にそうなのかなと疑いながら席を立ちあがると、紗名も後ろから足早についてきた。
「彗ちゃんだってかっこいいって言われていたよね」
「かっこいいじゃなくて、可愛いね。全然嬉しくないよ」
むすっとすると、紗名は機嫌を取るように背後からお腹に手を回し、横から顔を覗かせる。
「彗ちゃんはいつもかっこいいよ」
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