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嘘つきとでも言うように、紗名は僕を睨みつける。その潤んだ目からは今にも涙が零れそうだ。でも、彼女はぎゅっと唇を引き結んで耐えながら話を続けた。
「私ね、嫌がらせをされた話がしたいんじゃないの。そのウィスクラもね、私が見てすぐに消えちゃったの」
「消えた?」
「そう、まるで今日のリプみたいに」
「でも紗名のフォロワーは全部クラスメイトだったんだよね。それなら、送った奴もわかっているんじゃないの?」
もしそのときに知っていたら、きっと紗名のクラスに乗り込んでいた。紗名が止めてと言ったとしても、自分を抑えられなかったと思う。だって、紗名がそんな目にあって冷静に対応することなんてできっこない。
今だって絶対に許せないけれど、紗名がいまさら蒸し返して欲しくないのは理解できる。でもやっぱり、僕はその犯人が知りたかった。
歩道の真ん中で足を止めた僕らの前方から自転車のライトが迫ってきていた。避けようと手を引っ張っても、紗名は下を向いたまま動こうとしない。
「紗名、危ないよ!」
無理やり腕を掴んで引き寄せると、自転車に乗った男性は舌打ちをしながら彼女のすぐ脇を通り過ぎて行った。
「……彗ちゃん痛いよ」
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