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顔を上げた紗名は下を向いたままそう言った。つい力が入りすぎてしまったらしい。
「ごめん。でも自転車が来ていたから」
手の力を抜いた途端、紗名の手がすっと引込められた。うっすらと赤く指の跡のついた手首を親指でさすりながら。
「誰がやったか言いたくないの?」
「送られてきたのは一つのウィスクラじゃないの。その授業中にいくつも送られてきて。送り主のリミッターは一つずつ違ったし、どれも開いてすぐに消えてしまったから」
「一人ぐらい名前がわかる奴いないの?」
「リミッター名が本名じゃなかったから。みんな英数字を組み合わせた記号みたいなのに変わっていて、誰なのか全くわからなかったの。ウィスクラには誰かに言ったら写真をばらまくって書かれていたし」
みんなで示し合わせてやっていたってことなのか。こんなの嫌がらせじゃない。完全に犯罪だ。
「そんな手の込んだことするなんて、誰か首謀者がいたんじゃないの? IDは? スカリムの運営に連絡すれば今からでもスカリムをやめさせることもできる」
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