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知らないことなどないと思っていたのに、知らないことばかりだ。僕は紗名の何を知っていると言うんだろう。
祐ちゃんのことだってそうだ。僕は親友だと思っていたけれど、考えてみれば何もしらない。わかっていたつもりになっていただけだ。
二人とも僕のことをどう思っているのだろう。自分が思っているほど大切な存在ではないのかもしれない。そう思うと、ズキっと胸が痛んだ。それから指先や手のひらもツキツキと刺すように痛みだす。
寝返りをうち仰向けになって、手のひらを天井のダウンライトの光に翳してみる。指の隙間から見える光と手のひらがつくりだす影を見ていると、明るいのか暗いのかよくわからなくなってしまう。
そのまま両手のひらで顔を包んだ指の隙間から一筋涙が伝い落ちた。
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