6.二日目⑤

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 あの日最後に見た母さんの笑顔を思いだすと、懐かしさと一緒に消えることのない罪悪感やいくつもの後悔が心の中を覆い尽くしていく。それらを流してしまいたくて、僕は目を瞑って頭からシャワーを浴び続けた。  あの頃、入学と同時に始めたスカリムにすっかり嵌ってしまった僕は、昼夜問わず面白そうなネタを探すのに躍起になっていた。  スカリムに嵌ったきっかけは、始めたばかりの頃、僕の発したクラウドに知らない誰かがクラウドを返してくれたことだった。  もう名前も忘れてしまったけれど、遠くの知らない誰かが見た目や成績とか一切関係なく、僕の言葉に共感してくれた――― そう思うと、顔も住んでいる場所も知らないその人が僕にはとても近く感じられた。  それから、僕は毎日知らない誰かに向かってクラウドをするようになった。  初めはわずかな反応しか得られなかったけれど、どういうクラウドをするとリクラウドされるかということを分析することや、フォロワーを増やす為に何をすれば良いか考えるのは、まるでゲームのようで僕を興奮させた。  リアルの知り合いよりも、スカリムだけの繋がりのフォロワーが多くなってくると、僕はその増減に一喜一憂するようになる。  でも、ある程度まで行くと増え方も緩慢になり僕は焦りを感じ始めた。このままじゃいつになってもSSランクに辿りつけないと。  今でももちろんSSランクになるのは僕の目標でその為に毎日スカリムをしているわけだけれど、あの時の僕はまるで依存するように自分の価値の全てをスカリムに見出そうとしていたんだろうと思う。  いつの間にかスカリムは僕の生活の中で一番優先すべきものになっていた。
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