6.二日目⑤

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*  中学の成績は学校でもトップだったし、家族や先生たちも僕が県立のトップ高に行くと思っていただろう。でも、僕は第一志望の高校にわざと落ちて、紗名の第一志望だった第二志望の県立聖院高校に入った。  レベルを落としたと思っていたから、僕は過信していたんだと思う。自分が周りとはレベルの違う人間だと。今考えると恥ずかしいけれど、僕も父さんと同じように成績だけでみんなを見下していたのかもしれない。  確かに初めは授業についていくのも楽勝だと思った。入学後の実力テストも僕の成績は上位だったし。  でも、入学早々スカリムに夢中になった僕はろくに授業も聞かなくなった。授業中もこっそり机の下でいつもスカリムを開いていて。授業についていけていないことは薄々感じ始めてはいたけれど、そのくらいすぐに追いつけるだろうと高をくくっていたのだ。  しかし中間テストの結果は散々だった。テストが返ってきたのを見て、嫌な汗がじわりと出てきたのを今でも覚えている。初めてだった。テストを親に見せるのが嫌で学校で捨てるなんて。  紗名にも僕は成績が落ちたことを言わなかったし、もちろん親にも言えなかった。  でもすぐに三者面談があって、担任からテスト結果を渡された母さんは真っ青になる。当然だろう。僕だって自分の成績の落ち様には驚きを隠せなかったくらいなんだから。    三者面談の帰り道、珍しく少しお茶でもしましょうと喫茶店に入った母さんは、飲み物が運ばれてくると、「ねえ、彗太」とスマートフォンを弄っていた僕に話しかけた。 「もし授業についていけないのなら、家庭教師をつけるか塾に入ったらどうかしら? 先生も少し頑張らないといけないとおっしゃっていたし……」  きっとこういう話をされるとは思っていたけれど、改めて言われるとやっぱりうんざりする。 「心配かけてごめん。でも、ちょっと勉強をさぼっていただけだから一人で頑張るよ」 「そう? でも……」
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