6.二日目⑤

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 一番下のBランクからAランクに上がるのは、1,000人目のフォロワーがついた時。僕には今、約12000人のフォロワーがいて毎日増えてはいる。けれど、100,000人のフォロワーが必要なSランクへの道のりもまだ長い。 「下から二番目のAランク」 「そうなの。それならまだSSランクまでは時間が掛かりそうね。じゃあSランクになったら報告しなさい。ちゃんと勉強と両立して頑張ったことなら、母さんもお祝いしたいから」 「いいよ、SSランクになってからで……」  なんとなくSSランクにはなれないと思われているような気がして、僕は少しむすっとする。 「あら、何かあなたの言うことをきいてあげようと思ったのに……いいわ、それなら」 「え、ホントに? なんでもいいの? じゃあSランクになったら母さんに一番先に報告するよ」 「もう……現金ね、彗太ったら。でも本当に勉強も頑張ったらよ。母さんね、信念を持って何かを成し遂げることは大切だと思う。お父さんも」 「父さんの話はもういいよ」  母さんの言いたいことは聞かなくてもわかる。何度も何度も聞かされてきたことだ。 「彗太、お父さんは立派な方よ。毎日とても頑張っているのをあなたも知っているでしょ。沢山の人がお父さんの手に依って救われている。あなたにも誇りに思って欲しいの、お父さんが信念を持って仕事をしていることを」 「ふうん、家族を犠牲にしても? 父さんがいつも家にいなくても母さんは幸せなんだ。母さんが寝込んだ時だって、仕事優先で放っておくくせに。一番大切な人を助けられない信念なんて、僕には理解できないよ」  意地悪な言い方をしたと自分でも思った。母さんだって寂しいと思っているに決まっているのに。  案の定母さんの目が泳いだ。しまったなと思ったけれど、無理に作った笑顔で母さんは言う。 「ええ、寂しい時もあるけれど、母さんは幸せよ。彗太もきっといつかわかるわ……お父さんのこと」
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